これは何かの夢なのだ。さざなみの音が細かく途切れて、頭の奥がびりびりと痺れて視界がぐわりと歪む。古泉の白い足の先からまっ暗な闇にぼんやりと滲んで溶けて、まるで幽霊のようだと俺は思った。君とどこまでも、なんて誰が言った台詞だろう、俺はとてもじゃないけど口にはできそうになくて、ただひゅうひゅうと肺から息が漏れるばかりだ。海へ、星の光がそら、ゆらゆら揺れているの。俺はそれを掴もうとしたのか、もしくは魚が跳ねたのか、水面に小さく飛び散る雫、それはきっと誰かの涙なのだ。泣いていないはずなのに胸の奥からじわじわ溢れ出す、前へ前へ進む足元がどんどん砂に埋もれていくようでおぼつかない、俺は追いかけている、逆光がまぶしくて古泉の顔がどんなだったか忘れてしまいそうだ。思い返しながらあたたかな海に飲み込まれていく俺と古泉は薄ら笑いを浮かべているはずなのに、なんだかきっと悲しい目をしているのだ。ああ綺麗な瞼が閉じられていく、その様を見届ける俺の瞼の裏でにわかに消えていく古泉を、見た。沈んでいく、俺の手が古泉を、暗い海の底へ、あいつはやはり笑って、それでもわめくことを知らないまま。ただお前が幸せであることを願えるならそれでよかったのに。なぜだろう俺は古泉をこの手で終わらせようとしている、今この瞬間にでも、俺は泣いて泣いて消えてしまう古泉の終わりを見届けて、頬に張り付いた甘い涙を舌ですくってそれから小さく笑うのだ。 このまま君を海に沈めたなら |