おめでとう、古泉くん!おめでとう、古泉!
とびきり嬉しそうな彼女の顔を見ているだけで僕は幸せです。その隣にあなたがいて僕もあなたも彼女もみんなハッピー。ありがとうございます、心からそう思う一方でもう一人の自分がぼそりと言葉を落とす。その呟きはあまりに小さくてとても聞き取れやしない。黒く塗りつぶされていく感情と仄かに残る理性といつの間にか癖になっていた表情は服についた残り香みたいで大嫌いだった。
存在するかしないかなんてこの際どうでもいい、生と死は同価値なのだと誰かが言っていたっけ。それでもこの世界の住人はいつまでも笑い続けている。そのうち目くじらを立てて僕を縛り付けるに違いない。そう思ったらすべてが嫌になって、とうとう投げ出した。どうして逃げちゃいけないのだろう、どこまで逃避したら気が済むのだろう、それは自分が一番よくわかっているくせに。
ここは白と黒しかないので許されるはずのないことをしてもすべてが許容される世界なのだ。
(いいよ、いいよってみんなが口々に言うから)
もう何もわからない、青い魚ぐるぐる、コンクリートがらがら、そうこうしているうちに灰色がまた僕の目を焼き尽くす。目を瞑ったら声が聞こえた。
「なんだかやたら喉が渇いているんだ、」
なあ食べてもいいか?

視界が開けたと思ったらここは砂漠の上ではなく保健室のベッドの上だった。しんなりとしたシーツの上に二人、カーテンは閉めてある。どうぞご自由に、といつもの笑顔を張り付けた眠たくてたまらない僕の瞼が溶けていく。

波が全身を襲ってやわらかな衝撃と悪夢覚醒したその先に見たものとは?



ソラシドハッピー