死んだ魚の目が俺を見ている。 視界が開けた瞬間映ったものが古泉の目の奥の自分だったものだから俺は思い切り顔を顰めた。夢見が悪かったかのように思われたかもしれない。どうせ説明したところで俺の言葉はこいつには届かない。起き上がれば床はコンクリートで空はモノクロームに染まっている。 「ここはどこだ」 問えば、古泉は笑う。狂ったように笑う。気持ち悪いな。 「お連れしたんですよ、いつもの場所に」 古泉が早くと急かすので俺は地面に足を垂直に立てた。手を取られて向かう場所の説明もない。駆け落ちのようだと一瞬でも思った自分は一度そのへんに居る怪物に食われちまえばいい。 たどり着いた先は学校だった。なんでまたここへ足を運ばねばならないのか、俺にはさっぱりわからない。いい加減手を離してくれと訴えても一度嫌ですと言い張ればそれを覆すことはなかなか難しい。意外と強情な奴なのだ。いつもの通り部室へ来てしまった俺たちは特にすることがない。何もないからセックスをするのだろうか。それも違うな。いや、実際は違わないのかもしれないけど。 「どうしてほしいんだよ」 お前は俺に何を期待している。 机の上に押し倒せばすぐそこに青が沈んでいく。俺はそれを掴もうとして手を伸ばす。生きているという実感があまりない、こいつの目はいつだって淀んでいる。 「なあ、どうしてほしい」 なぜだか泣きそうになりながら、薄い唇を親指でやんわりとなぞる。そういえば感覚という感覚を失ったんだった。青を掴めば何かが変わっただろうか。 ワールズ・エンドの法則 |