横向きにうつ伏せている美しい横顔の曲線や、その白い肌がなす陰影、伏せられた睫、 思うだけでもたまらないのに、こんな無防備な姿を晒すのは反則だと思う。 周囲に誰もいないことを確認して、こっそりと唇の端に口付ける。

「準サン、起きてるでしょ」

小さく、嘘みたいに呟く。
例え起きていたとしても、恐らく準サンは寝ているふりをするだろう。 きっと今した口付けが何の意味も持たないものだということも、もうずっと前から、知っていたよ。
「・・・俺のこと嫌いになってもいいよ」
何故だろう、声が震えた。届かないことをわかりきっているのに、理解すら容易いのに、 どうして俺は、期待してしまうのだろう。
もし俺がどんな気持ちを抱いているか知っても、準サンは俺のことを許容するのだ。 そのことを思うとどうしようもなくなる。胸には色々な感情が混ざり合って、俺の中で溶けて、ひたひたと浸透していく。 見下ろしたはずの漆黒の髪や、透き通りそうな肌も、ぼやけて、にじんで、小さくなっていく。

泣いたことは、誰にも秘密だ。


ガーベラ