「執着できるのであれば何だって、誰だってよかった」
ああどうして思ってもない言葉ばかりが口から音を立ててしまうのだろう。部室のドアが開きかけて、また閉ざされた。俺が黙ってさえいれば、ここには空白だけが残るはずだったのに。
外は薄闇に染まり、部屋の蛍光灯に照らされた白いワイシャツがどこか眩しい。どすん、とバッグが落ちて、青く燃える瞳に身体が硬直する。
「別に、あんたでなくとも 」
吐き出してから、その重さや痛さを思い知る。胸の中にはたくさんの感情が交じり合い、渦巻いている。
かち合った視線、吸い込んだ息。いきなり胸倉をつかまれて、思わず目を瞑る。そのまま宙に投げ出されたような感覚がして、次に衝撃がくる。床に叩きつけられることくらい、もう慣れていた。蹴りを何発か食らって、むせる。そしてまた沈黙が訪れる。見上げると、顔がすべてを物語っていた。訂正しろと、目で言われている気がした。

(なあどうして あんたは俺を選んだんだよ)

一番聞いて欲しかった言葉を飲み込むと、ふいに涙が滲み、身体から息が抜けていく。
胸の内に冷たい感情がすべり落ちて、凍りつくような香りが、自嘲が、零れた。


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