バスから降りるとその無力さに胸が苦しくて、人の声も、何も、届かなかった。かろうじて解散を受け渡されたのを理解したのはいいが、荷物を持とうとする手も動かない。よくやった、やり切ったのだ、と頭の中でリフレインし続けている、誰かが言った適当な慰めの言葉、それに対する感情、無常観。
どれくらい呆然と立ち尽くしていたのだろう、気がつくとうじゃうじゃといたはずの群れがいつの間にか消えていて、グラウンド前に、ひとり佇んでいる人物を見据えた。

近づいたその間隔に、言葉は一切必要なかった。


そうして俺たちはグラウンドへと向かう。左手には土を、右手にはなくした心を持って。広い校庭のグラウンドには人の居る気配すらない。夕闇に染まりゆく空も、静まり返った校舎も、今はただそこにあるだけで。

涙で滲んだ乾いた土を、風に乗せるかのように撒いていく。
その一瞬の動作、指の滑らかな動きから、その顔についている尖った唇の拙い動きまで、目に焼き付けていた。
「砕いた骨、みたいですね」
声が少し、震えていた。僅かに俯いた表情を、見逃すわけがなかった。手からさらさらと、まるで今までの出来事を物語るかのように指の間をすり抜けていくものを、準太は思っているのだろうか。

その明後日のほうを向いた横顔が、こちらを向いて、嗚咽を押し殺したような笑い方をした。透明な粒が、落ちる。思わずたまらなくなって、汚れたままの両手を伸ばす。美しい瞼が瞬きをして、この土の上で息をしているのが精一杯の、今にも崩れ落ちそうな身体を、折れそうになるくらいに強く、強く抱き留める。

名前を呼んでやると、震えの止まらない身体は次第に力が抜けて行き、重心を預けてくる。しんごさ、ん、と、言葉にもならないような声が透明に溶け出して、乾いた瞳の奥が、痛む。

その指先を伝って流れていったはずの感情がこぼれて、俺たちはまたひとつ、大事なものをなくしていった。


プラティーモーリー