き み を よ ご し た ぼ く


近頃、俺は慎吾さんのことがずっと気になっていた。だけれど、こんな気持ちの悪い感情を打ち明けられたところでどうなるわけでもないので、慎悟さんに迷惑になるようなことは避け、なるべく頭の中だけで済まそうとも考えていた。
もしもあの手が俺に触れて、慎吾さんのそれが俺の中に入るかと思うと胸がどきどきして呼吸ができなくなりそうだった。

部活が終わった後、誰もいないロッカールームの前でひとり準太は佇んでいた。憧れのあの人がいつも着替えている場所だ。
おそるおそるロッカーを開けると、中にはユニフォームが入っていた。適当に脱ぎ捨てられたであろうそれを手に取るとするりとアンダーシャツが落ちそうになって、慌てて掴む。これが、慎吾さんの、肌に触れていた。思うだけで下半身が疼く感じがした。
ユニフォームを一度元の場所に戻し、使用済みであろうそれに鼻先を近づけてみる。かすかに汗の匂いがした。慎吾さんの匂いだ。
俺は床に座り込み、ベルトをゆるめた。自分の見慣れたそれをこすり、またいつもの妄想にふける。
(はあ、はあ。しんご、さん、)
イきそう、そう思った瞬間に、部室のドアが開く。俺は青ざめた。身体から血の気が引いて、自分の汚れた手も気にする余裕もないくらいに唖然とした。目の前には今さっき頭で描いていた人物そのものがいたからだ。
慎吾さんのロッカーは開いたままだ。対するその人も言葉を失ってしまったようで、未だ沈黙、俺はとりあえずズボンのファスナーを上げた。大切に持っていた慎吾さんのシャツをどうしたらいいのかわからず、きゅ、と握りしめる。
慎吾さんがこちらに向かってくる。
「そのシャツ、俺の?」
近づく足音がやんだとき、俺は俯くことしかできなくて、そうして恐ろしさでいっぱいの中勇気を振り絞って、小さくはい、と返事をした。
「それ、捨てていいから」
俺の気持ちに対してのあの人の答えはこうだった。顔は見れなかったけど、さぞ気持ちの悪そうな顔をしていただろう。
俺は今にも泣き出しそうになりながら部室を飛び出し、近くの教室のゴミ箱にそれを投げつけた。ぼろぼろに傷ついたつもりででも慎吾さんのほうがもっと傷ついているはずで、目からは透明が零れ落ち始め、それからまた床に転がった慎吾さんのシャツを拾い胸に抱く。

(よごしてしまってごめんなさい)

白かったはずのそれは準太の涙でまた汚れた。