学校の脇はひまわりが続く砂利道で、ああ今日も暑いなと榛名は黄色が左目を掠めていくのを感じながら手に提げたコンビニの袋を邪魔臭く思った。水滴ができつつあるその袋にはアイスが入っているが、なんだか歩いているうちにそんな気分ではなくなってしまったので帰ったころには青色のジュースとただの棒にでもなっているだろう。なっていたらいい。そんな気分だった。
前方から人が歩いてくる。どうせろくでもねえ奴だろうと決め付けていたら、視線を向けられて、足まで止められた。何だと思って見た瞬間、そいつはぐっと唇を噛み締めて反対方向に走り出したものだから、反射的に俺もそれを追いかけてしまった。

・・んで追いかけてくるんですか、が腕を乱暴に掴んだ後の第一声だった。逃げるからだと俺は言う。昔より幾分背が伸びて、大人びた顔つきに時の流れを思う。
タカヤの顔をずっと見つめていたら、嫌そうな表情が次第に泣きそうな顔に変わっていくものだから俺は少し動揺した。
「あんたにはわかんねェよ」
ぐっと握り締めた手、伏せられた瞼に涙が滲む。
「あのときの俺の気持ちも、ぜんぶ」
頭の中が真っ白になる。確かに俺はひどいことをしたかもしれない。でも俺はお前を忘れたことなんて一度もなかった。

「お前が、お前が一番大切にしていたものって、なんだよ」

声を絞り出して、震えだす腕のわななきに手の力を緩めた。
(お前の本当はどこにある)
俺はお前の本当の言葉が聞けるならそれでもいいと思った。俯いて表情が見えないタカヤの頬に手をやる。

「触んな」
その手は綺麗に振り払われ、無残にも太陽は俺たちを照らし続ける。影が伸びて、タカヤはその影を踏んでいる。その状態がずっと続けばいい。俺がお前にとっての本当で、お前が俺にとっての本当だ、そうだろう。
睨んだ目と目が合って、昔の痣だらけで涙を零すタカヤを思い出す。
「・・・答えろよ、」
何度も念じるように唱え続けても返ってこない。答えも結末もすべては俺の中にもタカヤの中にも存在しなかったのかもしれない。離した腕には痣なんかひとつも残っていやしなかった。

でももうあのころみたいに俺たちは笑えないんだ。



お れ も お ま え も も う い な い