通学途中、自分たちとは違う制服を着た女子高生を眺めながら、瞬きの間に過ぎ去る季節を尻目に俺はこいつの傍から離れたことがない。毎日毎日くだらない日々を、大人には理解できない言葉で、それこそテレパシーなんてものが使えたりする、現実と非日常の間でろうそくの灯みたいに生きている。 男鹿は揺らがない、炎に似ている。俺とは違って気まぐれな風に消されそうになったりしない、心の強いそれ。手に入らないものに憧れている、例えば、あの目が追い求めるものとか、俺には見えない何かだ。 昼休みの屋上で、彼の肩の上で小さな赤子がすやすやと眠りにつくころ、空は青くて心穏やかだ、俺は喧嘩は強くないので、平和ならそれが一番いい。半分空いた男鹿の背に寄り添うと、重い、と文句を言いながらも、どこまでも自然体でいる、そういう奴なのだ。背中はぴたりと収まってしまう、距離の取り方も、包み隠さない態度も、一緒にいて心地がいい。 (言葉にしたら色褪せて消えてしまうかな) そっと瞼を閉じれば、すべて伝わった気になってしまうけれど。 太陽に透けてしまう銀色の、昔はあまり好きではなかった髪を、大きな手のひらがさらりと撫ぜる。 あなたを、シンプルな言葉で飾りたくて。胸の奥底にじわりと染みこんでいく感情と、追い風を味方につけて飛んでいく鳥のような彼と、裸の王様と。 どこにもゆけないしどこへもゆかない。だって俺達は出会ってしまったから。 #つばめのころ こさかさんへ *** Happy birthday! |