体育館倉庫でうずくまっている高森を薄く開いた目で犯して、耳に当てられた手は一切を拒絶するようでますます烏丸は興奮を覚えていた。自身の伸びた影が今にも高森を覆い隠しそうになって、神隠しにでも遇うんじゃないかと烏丸は少し不気味に思った。 「頭が割れそうに痛いから寄るな触るな近寄るな頼むよなんか可笑しいんだ俺」 小さな身体を丸めた、その背筋の骨のラインをこなごなに砕きたい衝動に駆られつつ足を着実に一歩、また一歩踏み出す。近寄れば高森の腕はがくがくと震え、吐く息は荒く、とぎれとぎれ何か暗唱しているような呟く声が聞こえた。今までにかつて味わったことのない胸の高揚を感じながら烏丸はやめてと厭がる高森の手首を乱暴に掴み、壁へ押しやった。その垂れた髪の毛の隙間から見えた瞳からは透明がこぼれ落ちそうになっていて、烏丸は僅かに動揺した。・・・泣いていた。 「なにす」 んだよ、という強がりの言葉を遮るように唇に噛みつくと、高森は大きく目を見開いて、それから許容するようにゆっくりと閉じた。烏丸にとってそれは衝動としか言いようがなかった。あんなに張りつめていた手の力も大人しくなり、最後に唇をゆるく触れ合わせて終わる。頬を伝って零れた涙を舌で掬うように舐めるとしょっぱい味がした。 逆光 |