暗闇の中。大きな大きな口を開けた御堂筋は次第に俺を飲み込んでいく。ぎざぎざのサメみたいな歯。生気のない目。ああ、なんて冷たい色だろう。観念して視界を閉ざしてしまえば、氷の刃が全身を貫いていく、引き裂かれた胸が燃えるように痛んだ。
御堂筋、御堂筋。鼓動が、息が、熱が、全身でお前を求めているのに、本当は殺したいくらい憎んでいるんだ。
「どうして俺だったんだ」
自分に言い聞かせるような、不確かな声色が落ちていく。ふいに涙が零れて、言葉はばらばらに散らばって、もう、修復することはできない。

御堂筋はいつか触ってみたいと思っていた今泉の頬にそっと手を伸ばす。しゃがみこんで、それから首筋へ。手のひらを広げて、唇へ。青ざめている、死人みたいな顔をしている、今泉は泣いていた。頭の奥でいつまでも消えない声に顔を顰めて、首を傾げてみせる。
「俺のこと、好きか」
だからボクは考えた。ずっと考えていた。

# D a r l i n ' f r o m h e l l  ...20091123