闇の中にそれはあった、奥深くにある小さな光だ。
俺はそれに触ることはできない、許されていない、あいつの夢を殺すことができないからだ。
本当はずっと何もかも奪ってしまいたかった、なんて、言ってしまえたらどんなに楽だったろう。
きっとあいつは静かに受け入れるだけなのだ、俺が何を言って、何をしたところで。
金城はまっすぐに俺を見る。幼いころに向けられたままの、無垢な、一度も逸らすことのない瞳で、射るように光を放つ。まぶしすぎて時々、自分の存在がないんじゃないかと思うことがある。俺なんかすり抜けて、透明になる、ずっと遠くに行ける、行っていいんだ、俺のことなんて忘れて。

もう何年も浴び続けた視線がそろそろ痛い。目を細めてみれば無意識に手が伸びて、なんとなしに昔の癖で頭を撫でてしまった。大人びた表情を見せるようになった顔つきも、ほんのちょっと刺激をやるだけで幼い頃の何も知らない、子供の顔に戻るから不思議だ。
過去がフラッシュバックしているだけなのだろうか。前これをしたときはもう子供じゃないです、なんて真面目な顔して笑っていたのに、今はどうだ、されるがままじゃないか。
俺は引きつった笑みすら浮かべられない、本当はお前が憎くてたまらないんだ。冗談、そんなこと思ってどうする。仕方がないな、この口は嘘ばかり吐く。
目と目が合って、カチ、石がこすれた時みたいだ。
(おまえのその目が、おれの)
「どこを見ているのかわからないんだ」
お前にとって俺って、何なんだ?溢れ出す言葉を一度だって金城に言えた試しがない。
憧れを俺に押し付けているだけだろう。哀れんでいるだけだろう。本当はもう俺のことなんて好きじゃない。吐き出してしまえばいい、積もり積もったすべて。
「…なんてな」
こんな些細なことで不安げな表情を浮かべているに違いない金城を見たくなくて、煙草を灰皿に押し付けるみたいに揉み消した。

(ごめんな)
全部嘘だよ。言ってしまえたら。いつまでも解けない呪縛を思うように、お前が俺のことを永遠に忘れてしまわなければいいとそう、胸の奥、小さな光に願うよ。

# ホ ワ イ ト ・ ア ウ ト  ...20090804