瞼にかかる前髪の隙間から切れ長の瞳が覗いていた。
なぜだかあいつは俺の家にいて使い古したソファに座り、何を思ったかぼんやりとしている。
小さく胸が膨らみまたしぼんで、呼吸をしているのだろうが俺はそれを嘘のように思う、かざりもののような、まるで生きていない人間のように思う。テレビの画面を見据えたあいつはひとつ瞬き、小さく欠伸をした。息のようなそれはとても自然な仕草で、なんだか安心のような不安のような焦燥を覚える。
ちらりともこちらを見ようとはしない視線の先をどうにかしたくて、盲目に愛す、まるでキリストの十字架のような、首にかかった一枚のそれを、俺は。

そろりと伸ばした指先にかすりかけて、いきなり、手首を掴まれる。とても強い力だった。届くはずのないそれに、憧れた。
さわるな、と釘を刺すような目が、しかし優しくなっていく力加減に俺は言葉をなくし、自分の顔の表情がひどく歪んでいくのを感じた。手首に巻かれた冷たい温度、美しく伸びた腕の先の、骨張った手に、口付ける。

世界は青くそして白く染まっていく。触れることのないその光に溺れていく、見えない扉の向こう側に、真実があると人は言う。

地の果てまで来た俺たちはたったふたりでゲームを始める。永遠を追い求めた夢の終わり、繋いでいた手を離して、向き合い笑えば未来が変わる。
道は、示された。


キリストのC