教師とキスをした。
確かに俺は何度か鋼野に卑しい気持ちを抱いていたし、泣いている顔を想像しながら抜いたことがあったけれど、それでも彼は先生だったので、俺は普通にそれとなく接することを心がけていた。今のこの関係を壊すつもりも毛頭なくて、なのに、それなのに。むやみやたらと構いたいのか構われたいのかわからないその言動と、罪の意識のない無邪気な子供のような笑顔と。

家に帰ったと思ったら鋼野が居てなんでかパワプロ一人でやって寛いでて母さんはいなくて俺は仕方なく上着を脱いでソファーに座ったわけだけど急に近づかれてソファーに乗り上げられて驚いていたらその後ろの棚を探っているようでなのにふとした瞬間に全部を投げ出すみたいなそういう癖がこのひとにはあって探る指先が離れて急に顔を近づけられてああ本当は優しい目をしているのだなあ、と思った瞬間だ。
そうっと触れ合わせて離すだけのこの行為を何と呼べばいいんだろう。
「鋼野、は、俺のこと気にいったって、言ったよな」
「うん?」
何が起こったかわかっているようでわかっていないそういううざったさが時々すごく癇に障る。
「じゃあ俺は、あんたのこと好きだから、好きにしていいんだよな」
手首を掴んでねじって押し倒して、ひどいことをしてみればちょっとは理解するだろうと思って手に力を込めた。
「いってェ、いた、痛いって」
なにすんの、なんてまだ救いのある望みのある顔をしてお前の手だって痛いよと安易に俺の右手を触る鋼野は事態を悪化させる術をよく知っている。

何をしても絶対に俺を嫌うことのない鋼野。
振りほどけない糸と意図の絡まり、固まり、塊。

(おれが、切ってあげる)



# そ れ で も 笑 う