暗闇の中で目を開けてみる。もうひとりの自分がそっとこちらを覗き込んでいるような心地がした。先生はまだ眠ったままで、のそりとカーペットに足の裏をつければひやりとした金属が踝の辺りに触れた。畳んで置いてある衣服は俺が脱がせて順番通りに並べたものだ。先生は服を着ていない。 ごろりと転がっている身体を、その輪郭からきめ細やかな肌の表面が浮かび上がるまで、遠く一線を見据えて描いてみる。こうして見ると足の指の先まで美しいのだなあ、と俺は感心しながらそれらをゆるりと撫で上げ、何らかの反応が現れるまでを密かに慈しむ。 そうして先生が目を覚ましたと同時に小さく開かれた口を塞いで、目を瞑りながら先生の呼吸とか匂いとかそういったものを想像しながらひどく興奮した。甘ったるい先生の声。飲み込んだ唾、動く喉仏。舌を入れられて驚いている先生は次第に抵抗するのをやめて、視界を閉ざし、ほんの僅かを盾だけに残してその他全てを俺に委ねてしまう。でも俺は、盾にだけ特別な、それが本当は欲しかった。でも、とてもとても言葉にはならないなあ。 俺が笑うと先生も笑う。何の条件反射だろう。 口先を離して、手首を強引に掴み後ろで押さえつけると、骨の形が綺麗に浮かび上がる。腕よりももっと大きな白い白い、肩より空より高く伸びていくそれ。絵の具をこすりつけるように、窪みに沿ってつよく指先でなぞれば、ほら。 「ねえ、先生」 いつか先生の背中から、天使の羽が生えてくるんだよ。 先生は小さく呻いて笑う。何の条件反射だ。 # あ な た の 脊 椎 ま で |