※オリジナルだと思って読んでいただければ幸いです(すみませんでした)




ファミレスで打ち合わせした後、なんとなしに寄ってしまった家はいつもの見慣れたアパートだった。もう何度目になるのだろうか、それなりに物が散らかっているこの部屋にも慣れてきた。
とりあえずコンビニで買ってきたもの(金を出したのは俺だ)を置こうとしたら、麻生がそれを掴んで広げ始めた。缶ビールとスルメ、プリッツ、グミ、パックジュース(思いやりのバナナオレって長い商品名だなあ)、あとなんかもやしが売ってて記念に買ってやった。甘やかすのも大概にしたい。
麻生の家には冬にだけあるものだと思っていたコタツがまだ置いてあって、足をくぐらせるとひんやりと冷たい。机の上にミカンはないことを確認していたら、俺トイレ行ってくる!と麻生は子供のように元気よく立ち上がって行ってしまった。
特にすることがない俺は辺りをぼんやりと見渡してみるのだけれど、床にルービックキューブやら紙くずやらお茶のペットボトルやらがざっくばらんに落ちていて、それらを片手に取っては暇を潰し、元の位置に戻しておいた。そのときふと棚からはみ出そうになっている、見覚えのあるようなないような紙面を見つけてしまい、そろそろと手を伸ばした、ちょうどそのとき麻生はトイレから戻ってくる。
麻生は俺を見てほんの一瞬目を丸くして、珍しく真面目に、苦いものを誤って食べてしまったような顔をして、こう言った。
「それは、見んな」
麻生は何かを思い出したようで、若干恥ずかしそうな顔つきになりながらも紙切れを棚の奥へ収納した。なんで照れる?と疑問に思うと、ああ、これってあれだ、と俺はふと思い出した。
(初めて俺が、褒めたときの、)
担当になって、ダメ出しばかりしていたころに唯一、こいつにしかない、こいつにしかできない、そういう部分を言ってやった箇所だった。
俺は薄情な奴だからそんな些細なことは忘れてしまうけれど、お前は、そんな小さな出来事を大事そうに抱えて、一生忘れないでいて、くれるのだなあ。
「それ、俺すげー大切にしてんの」
ないしょな、と麻生はいたずらをした小学生のように笑う。そのすぐ後はお互いに照れてしまって何も言えなかったので、俺はとっさに、バーカ、って呟いていつもの定位置に座り食べたくもないプリッツの袋を破いてしまった。


# 担 当 と 作 者