白んだ朝、リネンのカーテンの揺れる隙間から、青年の肌が光と影の間に揺らめいて見えた。青年は裸のまま上半身を起こし、瞼を閉じたり開いたりしている。ドブやゴミやクズな人間ばかり見てきた俺は、その光景がまぶしくてまぶしくて思わず目を細めた。
美しいってこういうことを言うのか、と思いながら、声も出ないことに驚く。いつもなら、はよーくらいのテンションで話しかけられるのに、それができなかった。自分の状態に気がついた幻太郎は、アンニュイな表情をしてこちらを見てきたのでなんとなく居心地が悪かった。一度きれいなものと認識したら、自分の存在がそれを汚すから。ここから一歩も動けないし、さわれない。さわれねーなぁ。そんなことばかり考えて、ただ立ち竦む。
「おはようございます。ところでなぜ小生は裸なんでしょう?」
問いに対する答えに逡巡していると、もぞもぞとベッドの中に潜り込んでいた小さな怪獣が目を覚ます。
「覚えてないのぉ?」
乱数は無邪気な子供のように笑って、薄手の毛布に包まりながら膝の上に乗り上げる。指先で髪や頰をじゃれるみたいにさわって、されるがままの幻太郎の反応を見てますますいい気になっている。
「ねー、だいす。昨日は楽しかったねえ」
そう言いながら、乱数も俺も昨夜から変わらずにちゃんと服を着ている。けらけらと笑って、それからやっと乱数は細い腕を俺に向かって伸ばした。こんなにもか弱く折れそうなこの腕だけが救いの手なのだと帝銃はしみじみ思い、起きろー! と乱数をベッドから引っ張り上げればいつも通りの朝だ。


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